So-net無料ブログ作成
検索選択

Харваач ! XXXV

Miat.JPG

“もうこれ以上待てない…”

私はフロントにタクシーを呼んでもらった。
タクシー代として日本円を両替するとき、空港まで幾らぐらいかと聞いた。

「1,000トゥグリグです」

さいわいタクシーはすぐに来て、それに飛び乗った。

“寝坊か?まさか事故に遭ったのでは?それとも…、いや、彼女はそんな人じゃない”

悪い憶測が、頭の中をグルグル駆け巡った。
なんとか気持ちを落ち着かせようとしているところへ、陽気なタクシードライバーの男が、聞き取りにくい英語でおかまいなしに話しかけてくる。そして前を指さしながら、

「ドゥ、ユー、ゴー、トゥ、ベンジョ?ベンジョ?」

“え?便所に行くかって?朝早いからトイレを心配してくれているのか?
いまそれどころじゃないよ、ほっといてくれ…”

そう思いながら、男に “Don’t worry” と応えたが、同じことを何度も繰り返し聞いてくる。いいかげん鬱陶しくなって、

"だから!…”

今度は強く言い返そうとしたとき、ハッと気が付いた。

"あっ、この男が言うベンジョって、ベイジン、北京のことか!?”

男の発音も悪いが、私の聞き違いだった。

「オー、アイムソーリー!アイ、ゴー、トゥ、ナリタ!ジャパン!」
「オー!ナリタ!OK!OK!」

やっと話が通じて、二人でナリタ、ナリタと言いながら笑った。
が、そこでまたハッと気が付いた。

“しまった、この男が行き先を尋ねたのは、日本人かどうか確かめるためだ。
日本人と知って法外な料金を請求してくるにちがいない。空港まで1,000トゥグリグと聞いたが、はたして…”

男は終始ご機嫌なまま、空港へ着くと、

「1,100トゥグリグ」

当時、100トゥグリグは日本円で数十円、この差が日本人価格かどうかは微妙なところだが、おかげで少し気が紛れた。
私は、マギーが追いかけてきてくれるのではないかと、何度も振り返りながら出国審査へと進んだ。

帰宅して間もなく、マギーから、“見送りに行けなくてごめんなさい”と、詫びのEメールが届いた。今朝、急に体調を崩してしまったらしい。ともあれ、彼女が無事だったことと、再び連絡が取れたことに安堵した。

ちょうどこの頃、韓国を宗主国とする世界騎射連盟が発足し、私はそれに参画するため、世界中の騎射愛好家たちとの交流を始めていた。
韓国、モンゴル、ドイツ、フランスアメリカ、ハンガリー、トルコ・・・、しかし、彼らとのやり取りはすべて英語でなければならなかった。
英語が苦手な私は、翻訳をマギーに頼んで、海外から送られてきたEメールを彼女へ転送した。彼女はいつも素早く返してくれたが、時々、訳文の最後に、

“この人、英語があまり上手じゃないわ”

と、一文付けてよこしたりした。それが彼女らしくて可笑しかった。
またあるときは、私から何かを感じ取ったのか、

“あなたはOpen Heartだから大丈夫よ”

ひと回りも年下の娘からそう励まされるのは面映かった。それはともかく、このときの彼女の助勢があったからこそ、現在の国際的な騎射文化活動があるといえる。

ある日、マギーのほうからEメールが届いた。
なんと、近々日本に来るという。アメリカにいる親戚を訪ねるつもりで、途中、日本に立寄って、世話になった人や友達と会うらしい。

“領事館を辞めたので、今後は日本へ行くことが難しくなるから、きっとこれが最後になるでしょう”

と付け加えられていた。私は言葉の意味を深く考えずに、軽く返事をした。

「マギーの都合がよければ会おうか」

そして彼女を成田まで出迎えに行った。



コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。