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Харваач ! XXXVI

山下公園.jpg

成田空港・第1ターミナル国際線到着ロビーの電光掲示板が、マギーが乗る便の到着を示していた。しかし、同じ便に乗っていたとみられるモンゴル人たちが消えても、彼女は出てこなかった。前のこともあったので、

“来ないのかな…”

あきらめかけたとき、ふと横を見るとマギーが立っていた。
が、沈んだ顔をしていて、久しぶりの再会を喜びあう雰囲気ではなかった。“どうしたの?”と聞くと、自分の旅行バッグを取り違えられたという。
幸い、間違えた相手と連絡が取れて、今日中に駐日モンゴル国大使館に届けてもらうことになった。

私の車で渋谷にある大使館へ向かった。代々木公園のわきに車を止め、地図を片手に場所を探した。着いたのは夜、正門は閉まっており、駐車場から中に入れてもらった。守衛に指示された広い部屋に入ると、カジュアルな身なりをした中年のモンゴル人男性が二人、小さなテーブルを挟んでくつろいでいた。傍にマギーの旅行バッグが置かれていたが、間違えたのは彼らではなさそうで、彼女は自分の旅行バッグを手に取ると、彼らと言葉を交わすことなく部屋を後にした。

数日後、マギーを横浜に案内した。中華街で食事をして、山下公園を歩いた。
偶然にも、山下公園でモンゴル関連のイベントが催されていて、観光案内や物産などの店がテントを連ねていた。マギーはモンゴル語でスタッフたちとの会話を楽しみ、私は羊肉が苦手だったが、ホショルをひとつ買って二人で分けた。

山下公園を出て歩いていると、不意にマギーが言った。

「女性を車道側に立たせていいんですか?」

“あ、やられた!”と思った。
当時、モンゴルには歩行者用の横断歩道や信号機が無く、道路の横断が非常に危なかった。行き交う車の間を横切るのは慣れと度胸が必要で、日本の道路に慣れきった私はいつもモタモタして、マギーに手を引かれるように渡ったものだ。
だからつい、うっかりしていたのである。彼女もそれをわかっていて、わざと言ったようだ。

マギーがアメリカへ行く目的は、実は仕事を探すためだった。
その優れた能力やキャリアも、今後、日本やモンゴルで生かすことができないと判断したらしい。

「私、日本と自分の国を捨てるんです…」

彼女は吹っ切れたように言った。



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